日本は、自由主義経済でも、社会民主主義でもどっちでもよいのだ。理念、理論というものがあまりない。

 むしろ、どちらが都合がよいか、どちらが便利かということで自由に変えていく。

 アメリカはやはりまず理論、理念ありきなのだ、ということを非常に強く感じた。

 僕が日本一の音楽家だと思っている三枝成彰さんにこの話をしたら、彼は「音楽がまさにそうだ」と言っていた。

 日本人はなぜ音楽を聴くのかというと、情緒だ。気持ちが癒されたりリラックスできたりする。

 一方、西洋人にとっての音楽(哲学者カントの登場以降)は、情緒ではなくメッセージ(思想)なのだそうだ。西洋人にとって音楽を聴いて気持ちよくなるのは悪なのだ。あくまでも音楽はメッセージであり、気持ちよくさせるような音楽は堕落なのだという。

 ヨーロッパの人間は論理を重んじる。これがイデオロギーになる。日本人は情緒を重んじる。これが曖昧さや柔軟性になる。そのことをとても強く感じた。

田原総一郎 大統領単独インタビューで感じた最高責任者の悲哀
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20081127/115794/?P=11